【SAPの勉強】経理担当者が知っておきたいFIモジュールの3つのポイント【S/4HANA】

経理

経理担当者としてSAPのFIというシステムを使うことになるみたい。

でも、正直何のことかサッパリだから、勉強しておかなきゃ・・・。

この記事は、簿記の基本的な知識を持っているけれども、SAPには慣れていない経理担当者の方に向けた記事です。

この記事は、IT企業でSAP導入プロジェクトに参画したのち、経理担当者として事業会社に転職した私おりんごが書いています。

  • SAPってなに? FIってなに?
  • どんな仕組みになっているの?
  • 経理担当者が知っておいた方がよいことはなに?

というような疑問を解決します。

ぜひ最後まで読んで、SAP FIの基礎知識を身に着けてくださいね!

この記事は、簿記3級以上の知識があれば、より理解しやすくなります。

もしまだ簿記の資格を持っていないけれどもSAP FIについて学びたいという方は、簿記の勉強もあわせて行うことで理解が定着しやすくなります。

簿記を学ぶなら、クレアールの講座がおすすめですよ。

SAPとは

SAP社は、1972年にドイツで設立された会社です。

企業向けのビジネスソフトウェア・パッケージを提供することを主な事業としており、特に、エンタープライズリソースプランニング(ERP)パッケージ*で広く知られています。

SAP社の代表的なERPパッケージが、SAP S/4 HANAです。実務の場面では、このパッケージソフトをSAPと呼ぶこともあります。

*ERPパッケージとは

ERP(Enterprise Resource Planning)パッケージとは、企業の業務を統合的に管理・運営するためのソフトウェアの総称です。日本語では、「企業資源計画」と訳されます。

企業が持つ資源(ヒト・モノ・カネ)のデータをひとつのシステムで管理するため、業務担当者は正確な情報をスピーディーに得られるようになります。

下の図は、ERPパッケージを導入する前後でのデータの管理方法の違いです。企業内の様々な部門の業務で扱うデータがひとつのシステムで管理されるようになるため、ERPを導入することで業務効率の向上が期待できます。

ERPパッケージは、企業のたくさんの業務やデータを管理する必要があります。そのため、会計管理業務、在庫管理業務などいくつかのモジュールに分けて管理し、モジュールを組み合わせることでパッケージを構成しています。

会計業務で使う2つのモジュール

SAP S/4 HANAでは、会計関連業務で2つのモジュールが用意されています。FIモジュール(財務会計)とCOモジュール(管理会計)です。

おりんご
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2つのモジュールは、両方使わないといけないという決まりはありません。

しかし、私の経験上、SAPを使う企業ではほぼFIモジュールを使っています。COモジュールは50~70%くらいの企業で使われている印象があります。

FI - FInancial accounting

FIモジュールは、SAPで財務会計(Financial Accounting)を管理するためのモジュールです。

FIは、企業の財務データを一元管理し、帳簿作成、貸借対照表や損益計算書の作成、税務申告などをサポートします。

FIモジュールは、リアルタイムでの財務状況の把握が可能で、他のモジュール(例えば販売管理や人事給与管理)とも連携し、企業全体の財務管理を効率的に行うことができます。

例えば、販売管理モジュールからは売上データが、人事給与管理モジュールからは社員の給与データがFIモジュールに連携されます。

CO - COntrolling

COモジュールは、SAP ERPシステムにおける管理会計(Controlling)を担当するモジュールです。

COは、企業内部でのコスト管理や収益性分析を支援し、経営者が戦略的な意思決定を行うための情報を提供します。

FIが社外向けの財務諸表や税務申告を担っているのに対し、COは社内の経営層の意思決定をサポートすることに強みがあるのが特徴です。

おりんご
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本記事では、会計業務で使う2つのモジュール(FI/CO)のうち、FIモジュールの特徴についてお話します。

FIモジュールの全体像

FIモジュール(Financial Accounting)は、SAP ERPシステムの中で企業の財務会計を管理するモジュールです。企業の財務データを一元的に管理するため、財務諸表の作成や税務申告業務をスムーズに行いやすくなります。

FIモジュールの中にはいくつかのサブモジュールがあり、これによって、特定の業務に特化した管理や操作ができるようになります。

サブモジュールには、総勘定元帳(GL)、売掛金管理(AR)、買掛金管理(AP)、固定資産管理(AA)、資金管理(GM)などがあります。

例えば、主に営業や販売部門が使用するSDモジュールからは、売上や売掛金のデータがデータベースに登録されます。

FIモジュールは、売掛金管理(Accounts Receivable)というサブモジュールを用いることで、

  • 得意先ごとの売掛金の金額確認
  • 売掛金の入金予定日確認
  • 請求書の発行
  • 入金処理

などの業務を行うことができます。

業務担当者が知っておきたい3つのポイント

ここでは、FIモジュールを使用する経理担当者が知っておきたいことを、3つ紹介します。

おりんご
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紹介する3つ以外にも、知っておいた方が良いことはたくさんありますが、

SAPを初めて使う経理担当者の方であれば、この3つを最低限押さえておけば良いかなと思います。実務でSAPを使っていく中で、様々な機能を覚えていきましょう!

①仕訳入力の際に、借方と貸方を左右に分けず、同じ行に書く

まず1つ目のポイントは、仕訳入力の際に、借方と貸方を左右に分けないということです。

簿記を学んだことのある方であれば、借方は左・貸方を右に書いて左右の金額を一致させることは基礎の基礎。そのため、まずこの書き方に戸惑う方が多いかと思い、1つ目のポイントとしました。

SAP FIでは、借方と貸方を左右に分けず、代わりに転記キーを使って借方・貸方を表現します。

転記キーは、財務会計取引を転記する際に、「借方か貸方か」「どのサブモジュールに属する勘定科目か」などを決定するためのコードです。

転記キーには、以下のようなものがあります。

  • 40:G/L勘定の借方(サブモジュール:GL)
  • 50:G/L勘定の貸方(サブモジュール:GL)
  • 01:得意先の借方(サブモジュール:AR)
  • 11:得意先の貸方(サブモジュール:AR)
  • 21:仕入先の借方(サブモジュール:AP)
  • 31:仕入先の貸方(サブモジュール:AP)

以下は、8月1日に売掛金を記録し、8月10日にその売掛金が回収された取引の仕訳を表にしたものです。

売上取引の仕訳(8月1日)

日付勘定科目転記キー金額
2024/08/01売掛金-A社01150,000
2024/08/01売上50150,000

売掛金回収の仕訳(8月10日)

日付勘定科目転記キー金額
2024/08/10当座預金40150,000
2024/08/10売掛金-A社11150,000

このようにSAPでは、仕訳入力の際に、借方と貸方を左右に分けず、代わりに転記キーを用いて借方・貸方を表現するのが特徴です。

実際のSAPの入力画面を見ていただくのが一番分かりやすいかと思います。

実際の企業で使われているシステムの画像をここに載せることはできませんが、以下の「SAP担当者として活躍するための FI/CO入門」という本には分かりやすい画像が載っています。

ご興味のある方はこちらの本を読んでみてください。

②「未転記伝票」を転記すると、取消ができない

2つ目のポイントは、「未転記伝票」を転記すると、取り消すことができない、ということです。

SAPの伝票には、「未転記伝票」と「転記済伝票」の2種類があります。このうち、「未転記伝票」は修正・削除することができますが、「転記済伝票」になってしまうと取り消すことができません。

誤って転記してしまった場合は、反対仕訳を行う必要があります。

そのため、未転記伝票を転記する場合は、入力ミスがないか、改めて確認しましょう。

おりんご
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企業によっては、「未転記伝票」を転記する際に、部長など偉い人の承認が必要な設定にしていることもあります。いち担当者が転記する場合は、特に注意してチェックするようにしてくださいね。

③勘定科目「売掛金」と「買掛金」は、得意先名・仕入先名を使用する

3つ目のポイントは、勘定科目「売掛金」「買掛金」は基本的に使わず、かわりに得意先名・仕入先名を使用するということです。

この仕組みを理解するには、統制勘定ということばを理解する必要があります。

統制勘定は、補助元帳からの取引データを集約し、総勘定元帳(G/L)に記録するための勘定科目です。

補助元帳の一つである、売掛金元帳を例に考えてみましょう。

FIのサブモジュールであるAR(売掛金管理)が、売掛金元帳のようなものだとイメージしてください。

ARには、統制勘定:売掛金が設定されています。

ARでは、得意先マスタというものを持っており、得意先ごとに売掛金の金額を管理しています。

得意先マスタは統制勘定である売掛金と紐づいているので、得意先マスタに存在する取引先を勘定科目として用いることで、自動的に得意先ごとに売掛金を管理できる仕組みになっています

そのため、統制勘定が設定されている勘定科目である、売掛金と買掛金については、勘定科目「売掛金」「買掛金」ではなく、得意先名・仕入先名を使用するのです。

【まとめ】経理担当者が知っておきたいFIモジュールの3つのポイント

SAP FIモジュール初心者の経理担当者が、最低限知っておきたいポイントは以下の3つです。

  1. 仕訳入力の際に、借方と貸方を左右に分けず、同じ行に書く
  2. 「未転記伝票」を転記すると、取消ができない
  3. 勘定科目「売掛金」と「買掛金」は、得意先名・仕入先名を使用する

この記事では、3つのポイントを押さえる上で前提となるSAP全般の知識も併せてご紹介しました。

以下を参考に、FIモジュールの基礎知識についてもう一度復習してみてください。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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