【簿記】売上原価と仕入の違いは?

簿記

簿記の勉強をしていると、決算整理で色んな勘定科目を使っていて混乱する。

特に繰越商品に関する仕訳で、「売上原価」と「仕入」の使い分けが分からない…!

簿記3級や2級は、精算表や貸借対照表、損益計算書を作る問題が頻出です。

その際に必ずといっていいほど出題されるのが、期首と期末の繰越商品を整理して「仕入」や「売上原価」に振り分ける、売上原価の算定仕訳です。

売上原価の算定仕訳は、様々な勘定科目が出てくるので混乱しますよね。

この記事では、決算時における売上原価の算定仕訳について、分かりやすく解説していきます。

この記事を最後まで読むことで、混乱しがちな売上原価の算定仕訳の仕組みが分かり、精算表などの作成問題で満点を狙えるようになりますよ。

おりんご
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私も売上原価の算定は仕組みが複雑でなかなか理解できず苦労しました。

分かりにくかったポイントを重点的に説明していくので、一緒に勉強していきましょう!

売上原価とは

売上原価とは、当期の売上高に対応する商品の原価(仕入値)を指します。

例えば、期首(前期)の繰越商品が当期に売れた場合、期首の繰越商品分の仕入は売上原価に含まれます。

当期に仕入れた商品が当期に売れた場合も、当期に仕入れた商品分の仕入は売上原価に含まれます。

しかし、当期に仕入れた商品が当期に売れず、繰越商品となった場合には、当期に仕入れた商品分の仕入は売上原価に含めません。

表にまとめると以下のようになります。

商品の仕入時期商品の販売時期売上原価に含めるか
前期(繰越商品)当期含める
当期当期含める
当期来期以降含めない

当期の売上高に対応する商品の原価(仕入値)が売上原価です。

仕入のうち、当期に販売できなかった商品は、繰越商品となり売上原価に含めない、と理解していただければOKです。

売上原価の計算方法

売上原価は以下の計算式で求められます。

売上原価 = 期首繰越商品(期首商品棚卸高)+ 当期商品仕入高 - 期末繰越商品(期末商品棚卸高)

前期の繰越商品に当期の仕入高を足し、当期の仕入高のうち繰越商品となった分を引くことにより計算します。

売上原価を計算するための決算整理仕訳

売上原価は、「仕入勘定を使って仕訳する方法」と「売上原価勘定を使って仕訳する方法」の2つのパターンがあります。

どちらのパターンで仕訳をするかは、問題ごとに指定されています。

私の場合は、売上原価の算定方法に2つパターンがあることを理解していなかったので、どの勘定科目を使うのか混乱していました。

どちらのパターンかで使う勘定科目が変わるので、売上原価の算定は、仕訳方法の判断を最初にするようにしましょう!

仕入勘定を使って仕訳する方法

「売上原価を仕入勘定で計算する」等の記載があれば、こちらの仕訳方法になります。

次の問題を例に考えてみましょう。

■問題■
期首繰越商品は1000円(当期商品仕入高は5000円)であった。
期末繰越商品は以下のとおりである。決算整理仕訳をしなさい。
   帳簿棚卸数量 20個   実地棚卸数量 18個
   単価(原価)@100円  時価(正味売却価額)@90円
なお、売上原価は仕入勘定で計算する。

前提

まず前提として、三分法で仕訳されている場合、当期の仕入は以下のように記載されています。

借方科目金額貸方科目金額
仕入5000現金5000
※貸方科目は、買掛金や買掛手形などの場合もある。

売上原価を仕入勘定で計算する場合、以下計算式の「当期仕入高」はすでに仕訳されているため、決算整理仕訳での対応は不要です。

売上原価 = 期首繰越商品(期首商品棚卸高)+ 当期商品仕入高 - 期末繰越商品(期末商品棚卸高)

つまり、決算整理仕訳として対応が必要なのは、以下の2つになります。

  1. 期首繰越商品(期首商品棚卸高)を、仕入勘定に振り替える
  2. 当期の仕入勘定から、期末繰越商品(期末商品棚卸高)の分を除く

では、順に決算整理仕訳を見ていきましょう。

1.期首繰越商品(期首商品棚卸高)を、仕入勘定に振り替える

期首繰越商品1000円分を、仕入勘定に振り替えます。

借方科目金額貸方科目金額
仕入1000繰越商品1000

これで、売上原価の計算式のうち、以下の赤色のマーカー部分が仕入勘定に算入されました。

売上原価 = 期首繰越商品(期首商品棚卸高)+ 当期商品仕入高 - 期末繰越商品(期末商品棚卸高)

2.当期の仕入勘定から、期末繰越商品(期末商品棚卸高)の分を除く

当期の仕入高はすべて仕入勘定に含めてしまっているので、繰越商品となった仕入分を仕入勘定から除くことで当期の売上高に対応する商品の原価である、売上原価を計算することができます。

しかし、決算整理の結果、商品が帳簿に記載されている数量と異なっていたり(棚卸減耗損)、商品の価格が下がっていること(商品評価損)があります。

そのため、期末繰越商品(期末商品棚卸高)は、期末時点での数量・価格をベースに算出しなくてはなりません。

算出は、以下のステップで進めます。

  1. 仕入時の数量・価格(帳簿棚卸数量×単価)で、期末繰越商品(期末商品棚卸高)分を仕入勘定から除く
  2. 期末繰越商品(期末商品棚卸高)から、棚卸減耗損を除く
  3. 期末繰越商品(期末商品棚卸高)から、商品評価損を除く
①仕入時の数量・価格で、期末繰越商品(期末商品棚卸高)分を仕入勘定から除く

当期の仕入勘定から、期末繰越商品分の仕入を除きます。

期末繰越商品は、仕入時時点の価格・数量をベースに考えるので、20個×100円で2000円分です。

借方科目金額貸方科目金額
繰越商品2000仕入2000
②期末繰越商品(期末商品棚卸高)から、棚卸減耗損を除く

会社は、決算時に実際の商品の数量を数え、帳簿と一致しているかを確認します。これを棚卸といい、棚卸によって把握される数量を実地棚卸数量と言います。

問題では、帳簿棚卸数量が20個なのに対し、実地棚卸数量が18個でした。商品の破損や紛失などで実地棚卸数量が帳簿棚卸数量より少ないことがあり、簿記ではこれを棚卸減耗損として処理します。

今回の場合、帳簿上で@100円で購入した商品が2つ減っているため、棚卸減耗損が200円分発生しています。これを仕訳で表すと以下のようになります。

借方科目金額貸方科目金額
棚卸減耗損200繰越商品200
③期末繰越商品(期末商品棚卸高)から、商品評価損を除く

会社は、棚卸の際に商品の時価(正味売却価額)も確認します。値上げや値下げなどで、仕入時とは価格が異なることがあるからです。

時価が原価より高い場合は特段処理は必要ありませんが、原価より低い場合は時価に合わせて商品の価値を減額しなくてはなりません。簿記では、これを商品評価損として処理します。

今回の場合、実地棚卸数量である18個分の商品の価格が、@100円から@90円に下がっています。そのため、18個×@10円の180円分を、商品評価損として期末繰越商品(期末商品棚卸高)から除く必要があります。これを仕訳で表すと以下のようになります。

借方科目金額貸方科目金額
商品評価損180繰越商品180

解答

問題の決算整理仕訳をまとめると、以下のようになります。

■問題■
期首繰越商品は1000円(当期商品仕入高は5000円)であった。
期末繰越商品は以下のとおりである。決算整理仕訳をしなさい。
   帳簿棚卸数量 20個   実地棚卸数量 18個
   単価(原価)@100円  時価(正味売却価額)@90円
なお、売上原価は仕入勘定で計算する。
借方科目金額貸方科目金額
仕入1000繰越商品1000
繰越商品2000仕入2000
棚卸減耗損200繰越商品200
商品評価損180繰越商品180
おりんご
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仕入勘定を使って売上原価を計算するには、次の2つの処理が必要になることがポイントです。

  1. 期首繰越商品(期首商品棚卸高)を、仕入勘定に振り替える
  2. 当期の仕入勘定から、期末繰越商品(期末商品棚卸高)の分を除く
    • 仕入時の数量・価格で、期末繰越商品(期末商品棚卸高)分を仕入勘定から除く
    • 期末繰越商品(期末商品棚卸高)から、棚卸減耗損を除く
    • 期末繰越商品(期末商品棚卸高)から、商品評価損を除く

売上原価勘定を使って仕訳する方法

「売上原価を売上原価勘定で計算する」等の記載があれば、こちらの仕訳方法になります。

同じ問題を例に考えてみましょう。

■問題■
期首繰越商品は1000円(当期商品仕入高は5000円)であった。
期末繰越商品は以下のとおりである。決算整理仕訳をしなさい。
   帳簿棚卸数量 20個   実地棚卸数量 18個
   単価(原価)@100円  時価(正味売却価額)@90円
なお、売上原価は売上原価勘定で計算する。

前提

前提として、三分法で仕訳されている場合、当期の仕入は以下のように記載されています。これは、仕入勘定を使って売上原価を計算する場合と同じです。

借方科目金額貸方科目金額
仕入5000現金5000
※貸方科目は、買掛金や買掛手形などの場合もある。

売上原価を売上原価勘定で計算する場合は、以下の式に基づき、3つの作業をする必要があります。

売上原価 = 期首繰越商品(期首商品棚卸高)+ 当期商品仕入高 - 期末繰越商品(期末商品棚卸高)
  1. 期首繰越商品(期首商品棚卸高)を、売上原価勘定に振り替える
  2. 当期商品仕入高を、売上原価勘定に振り替える
  3. 売上原価勘定から、期末繰越商品(期末商品棚卸高)の分を除く

では、順に決算整理仕訳を見ていきましょう。

1.期首繰越商品(期首商品棚卸高)を、売上原価勘定に振り替える

期首繰越商品1000円分を、売上原価勘定に振り替えます。

借方科目金額貸方科目金額
売上原価1000繰越商品1000

これで、売上原価の計算式のうち、以下赤色のマーカー部分が売上原価勘定に算入されました。

売上原価 = 期首繰越商品(期首商品棚卸高)+ 当期商品仕入高 - 期末繰越商品(期末商品棚卸高)

2.当期商品仕入高を、売上原価勘定に振り替える

当期商品仕入高5000円を、売上原価勘定に振り替えます。

借方科目金額貸方科目金額
売上原価5000仕入5000

これで、売上原価の計算式のうち、以下赤色のマーカー部分が売上原価勘定に算入されました。

売上原価 = 期首繰越商品(期首商品棚卸高)+ 当期商品仕入高 - 期末繰越商品(期末商品棚卸高)

3.売上原価勘定から、期末繰越商品(期末商品棚卸高)の分を除く

2.当期商品仕入高を、売上原価勘定に振り替える によって、当期の仕入高はすべて売上原価に振り替えられました。そのため、当期の売上高に対応する商品の原価である、売上原価を計算するには繰越商品となった仕入分は売上原価勘定から除く必要があります。

また、仕入勘定を用いて売上原価を算出した場合同様、棚卸減耗損・商品評価損は期末繰越商品(期末商品棚卸高)から除かなくてはなりません。

売上原価の算出は、仕入勘定を用いて算出した場合と大きくは変わりませんが、以下のステップで進めます。

  1. 仕入時の数量・価格(帳簿棚卸数量×単価)で、期末繰越商品(期末商品棚卸高)分を売上原価勘定から除く
  2. 期末繰越商品(期末商品棚卸高)から、棚卸減耗損を除く
  3. 期末繰越商品(期末商品棚卸高)から、商品評価損を除く
①仕入時の数量・価格で、期末繰越商品(期末商品棚卸高)分を売上原価勘定から除く

売上原価勘定から、期末繰越商品分の仕入を除きます。

期末繰越商品は、仕入時時点の価格・数量をベースに考えるので、20個×100円で2000円分です。

借方科目金額貸方科目金額
繰越商品2000売上原価2000
②期末繰越商品(期末商品棚卸高)から、棚卸減耗損を除く

※このステップは仕入勘定で売上原価を計算した場合と全く同じです。

会社は、決算時に実際の商品の数量を数え、帳簿と一致しているかを確認します。これを棚卸といい、棚卸によって把握される数量を実地棚卸数量と言います。

問題では、帳簿棚卸数量が20個なのに対し、実地棚卸数量が18個でした。商品の破損や紛失などで実地棚卸数量が帳簿棚卸数量より少ないことがあり、簿記ではこれを棚卸減耗損として処理します。

今回の場合、帳簿上で@100円で購入した商品が2つ減っているため、棚卸減耗損が200円分発生しています。これを仕訳で表すと以下のようになります。

借方科目金額貸方科目金額
棚卸減耗損200繰越商品200
③期末繰越商品(期末商品棚卸高)から、商品評価損を除く

※このステップは仕入勘定で売上原価を計算した場合と全く同じです。

会社は、棚卸の際に商品の時価(正味売却価額)も確認します。値上げや値下げなどで、仕入時とは価格が異なることがあるからです。

時価が原価より高い場合は特段処理は必要ありませんが、原価より低い場合は時価に合わせて商品の価値を減額しなくてはなりません。簿記では、これを商品評価損として処理します。

今回の場合、実地棚卸数量である18個分の商品の価格が、@100円から@90円に下がっています。そのため、18個×@10円の180円分を、商品評価損として期末繰越商品(期末商品棚卸高)から除く必要があります。これを仕訳で表すと以下のようになります。

借方科目金額貸方科目金額
商品評価損180繰越商品180

解答

問題の決算整理仕訳をまとめると、以下のようになります。

■問題■
期首繰越商品は1000円(当期商品仕入高は5000円)であった。
期末繰越商品は以下のとおりである。決算整理仕訳をしなさい。
   帳簿棚卸数量 20個   実地棚卸数量 18個
   単価(原価)@100円  時価(正味売却価額)@90円
なお、売上原価は売上原価勘定で計算する。
借方科目金額貸方科目金額
売上原価1000繰越商品1000
売上原価5000仕入5000
繰越商品2000売上原価2000
棚卸減耗損200繰越商品200
商品評価損180繰越商品180
※赤字は、仕入勘定で売上原価を計算するときには不要な仕訳

売上原価勘定を使って売上原価を計算するには、次の3つの処理が必要になることがポイントです。

仕入勘定を使う場合との差は、当期商品仕入高を、売上原価勘定に振り替えることです。

  1. 期首繰越商品(期首商品棚卸高)を、売上原価勘定に振り替える
  2. 当期商品仕入高を、売上原価勘定に振り替える
  3. 売上原価勘定から、期末繰越商品(期末商品棚卸高)の分を除く
    • 仕入時の数量・価格で、期末繰越商品(期末商品棚卸高)分を仕入勘定から除く
    • 期末繰越商品(期末商品棚卸高)から、棚卸減耗損を除く
    • 期末繰越商品(期末商品棚卸高)から、商品評価損を除く

【まとめ】決算整理で売上原価を計算するときに、勘定科目「仕入」で計算する場合と、勘定科目「売上原価」で計算する場合がある

売上原価と仕入は、どちらも売上原価を算定する際に使う勘定科目です。

売上原価は勘定科目「仕入」で計算する場合と、勘定科目「売上原価」で計算する場合があります。

どちらのパターンで仕訳をするかは、問題ごとに指定されているので、違いを理解してどちらで出題されても迷わず仕訳ができるようにしておきましょう。

以下を参考に、売上原価と仕入の違いを復習してみてください。

最後までお読みいただきありがとうございました!

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